お殿様-庶民
政治家や官僚-庶民
世は変われど、いろいろと「うーむ」と感じることが多いですね。
落語の世界では思わず、クスッとできる「うーむ」をたくさん垣間見れますね。
『ねぎまの殿様』もそのひとつ。
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家来を連れて、お忍びで外出したお殿様が、
上野広小路あたりでえもいわれぬ旨そうな
醤油の香りに誘われて入ったいわゆる「下々の民」向けの
料理屋に入る。
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初めて入る庶民の店で、注文の仕方など分かるわけもないお殿様は、
とにかく「隣の人が食べているあの旨そうなのは何か?」と尋ねると、
店の人は「ねぎま」だと言うのだが、お殿様には早口過ぎて聞き取れず、
「ニャー」としか聞こえない。
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出てきた「ニャー」は鮪のアラや血合いも入り、
上手い具合に赤味を帯びたレアに仕上がり、
葱も安い緑の部分が入った庶民向けの出来栄えだったが、
お殿様は大変気に入り「ねぎま」を「ニャー」と言う食べ物と覚えて
大満足でお屋敷に帰る。
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お屋敷であの味が忘れられないお殿様は「ニャー」を作ってくれと
所望する。料理番は、気を使って脂は体によくないので蒸して
火入れが十二分のパサパサの鮪にして、葱もクタクタに煮込んでしまった。
さらにお殿様が、葱の熱い芯がピューッと飛び出す鉄砲仕掛けを
気に入っていたなんて露知らず、ふぅふぅ冷ましてお出ししてしまう。
「この灰色のものはニャーではないぞよ」と言い、作り直してもらう。
・・・
◇
『目黒のさんま』もそうですが、最後の最後まで世間知らずな
お殿様と、あたふたする家来と、それを笑い話にできる庶民の
おおらかさが楽しいですね。